最近、思う事

ところで、過日、発表された国連の予測によると、2300年の日本人の平均寿命は、108歳に達するそうです。本年、厚生労働省も我が国の100歳以上のお年寄りが初めて2万人を突破した事を発表しました。いよいよ、「百歳人生」の到来でしょうか。いずれにせよ、長寿社会の本格化は疑う余地もありません。
20世紀は、たしかに、科学技術の進歩に伴い人類に大きな貢献をもたらしました。しかし、一方、「進歩」が人間を置き去りにし自己目的化してエスカレートしたために、生じた悲劇も少なくありません。この傾向は、年毎に顕著となり、譬えば、クローン技術の人間への転用・等々、「科学技術の一人歩き」が懸念されます。
20世紀は、はたして、人類を幸福にすると言う意味で、「前進」したのでしょうか。新世紀・21世紀は、人類に優しく微笑みかけるのでしょうか。
容赦なく加速し続けるグローバリゼーションと言う荒波に飲み込まれ、内へ内へと自閉して行かざるを得ない閉塞感。 時代の流転の狭間に根無し草の様に漂いながら、生きる根拠を模索しなければならない不安感。何とも寒々とした心象風景です。
山積する地球的問題群もさることながら、我々は、はじめに、ユネスコ憲章が謳う様に心の中に「平和の砦」を築かなければならないのです。
私は、今、歴史学者・アーノルド・J・トインビーの言葉を思い興しています。
科学技術によりもたらされた「力」が未曽有の勢いで増大した。結果、人々の「倫理行動水準」とのギャップが大いに広まる。そして、原子力は、劇的に格差を拡大させた。核兵器と言うモンスターをコントロールするには、仏陀や聖フランチェスコが体現していた様な「完徳」(透徹した非暴力の精神)が必要不可欠なのである。
話は、変わります。
科学万能の現代では、理性や合理主義が重んじられる、一方、感性やメンタリズムが本当に忘れられています。
人の心と心を繋ぐコミュニケーションの手段の一つに音楽がありますが、フランス学士院芸術アカデミーの終身事務総長・ランドルフスキーの言葉を借りれば、「音律は、鼓膜を相手にしているのではない、心の奥底に呼びか魂の琴線を共鳴させてヒューマニズムと云うの和音を響かせる」 のだそうです。
或る時は勇気を、或る時は平和の祈りを、そして、或る時は人間の誇りを呼び覚ますのです。
聴覚が不自由な人にも、音は聞こえなくても演奏者の身振や楽器が発する振動や風圧で音楽を感じるそうです。「文化で心と心を結べ!」は、私の座右の銘の一つです。